食用コーティングの開発
野菜や果物は、収穫したら時間との勝負。すぐ腐るから、冷蔵し、急いで運び、売れ残れば捨てる。廃棄は仕方のないコストだと思われてきた。食料が足りないなら、もっと作ればいい——そう考えられてきた。
食料をもっと作るのではなく、すでにある食料が「腐るまでの時間」を伸ばした。しかも原料は、捨てられる皮や種。食べ物の廃棄物を使って、食べ物の廃棄を防ぐ。自然が持つ仕組みに逆らわず、それを強化するという道を選んだ。
Apeel Sciences(アピール・サイエンシズ)は、アメリカ・カリフォルニア州ゴリータに本社を置く、フードテック企業です。2012年に創業されました。 同社が作るのは、野菜や果物にかける「食べられるコーティング」です。 果物や野菜が腐る原因は、たったふたつしかありません。水分が抜けること(乾燥)と、酸素が入ること(酸化)です。実は、すべての果物や野菜は、もともと表面に「クチクラ」と呼ばれる薄い脂質の層を持っていて、それが自分自身を守っています。 Apeelがやったのは、この自然の仕組みを「強化する」ことでした。 原料は、ブドウの皮や種、果肉といった、他の野菜や果物の捨てられる部分です。そこから脂質(油)を絞り出し、粉末にして、水と混ぜて野菜や果物に吹きかけます。すると、目に見えない「もう一枚の皮」ができ、水分の蒸発と酸素の侵入を遅らせます。 味も匂いも色もありません。アメリカ食品医薬品局(FDA)から「一般に安全と認められる(GRAS)」という認定も受けています。 効果は劇的です。アボカドは最大50%長持ちし、ライムの日持ちは3倍になります。冷蔵しなくても数週間もつため、冷蔵設備のない地域でも農作物が市場に届くようになります。アスパラガスは、航空便ではなく船便で運べるようになりました。キュウリは、プラスチックの包装フィルムが不要になりました。 「食べ物に載せていいのは、食べ物だけ」——これが同社の哲学です。
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