受粉サービスの提供
受粉はハチが勝手にやってくれるもの——農家は何十年もそう考えてきた。養蜂家が巣箱を畑に置き、開花が終われば連れて帰る。ハチがどこへ飛び、どれだけ受粉したかは誰も測らない。農業の技術革新は、土壌や種子や農薬に向けられてきた。
農薬や肥料で作物を「守る」のではなく、受粉というこれまで誰も管理しなかった工程そのものを最適化した。ハチを敵にも道具にもせず、その生物学に沿って強くし、訓練する。ハチを変えるのではなく、ハチとの関わり方を変えた。
Beeflow(ビーフロー)は、アルゼンチン発のアグリテック企業です。2016年に設立され、現在はアメリカ・カリフォルニアに本社を置いています。 同社が提供するのは「受粉(じゅふん)サービス」です。世界の農作物の約75%は、ハチなどによる受粉に依存しています。しかしこの受粉は、これまで誰も真剣に管理してこなかった領域でした。 Beeflowの技術は、2本の柱からなります。 ひとつは、ハチを強くする栄養補助食です。植物由来の特定の分子をハチに与えることで、免疫系が強化され、死亡率が最大70%減少します。さらに、低温下でも活発に飛べるようになり、寒い日の飛行回数が通常の7倍にまで増えます。ブルーベリーやアーモンドの開花期はわずか2〜3週間。この短い期間に寒波が来ると、受粉されずに収穫が激減してしまうのです。 もうひとつが、ハチの「訓練」です。ブルーベリーの花は蜜が少ないため、ハチはあまり好みません。オレゴンの農家が500個の巣箱を借りてブルーベリー畑に置いたのに、ハチたちは全部、隣の森へ飛んで行ってしまった——そんなことが起きます。 そこでBeeflowは、パブロフの犬の実験と同じ原理を使います。特定の花の香り(合成した揮発性物質)を巣箱の中でハチに嗅がせながら、砂糖水を与える。すると外に出たハチは、その香りを覚えていて、目的の作物へと飛んでいきます。ブルーベリーの香りを特定し合成するのに、3年と1000回以上の実験を要しました。 ハチの記憶は短いため、受粉シーズン中は2週間ごとに訓練をかけ直します。 結果として、収穫量は平均32%、ブルーベリーでは最大60%増加しています。
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