AIエージェントによる新素材の発見
半導体チップに使う新しい素材を見つけて実際の工場に届けるまでには、10年以上の歳月と数百億円規模の費用がかかるのが当たり前とされてきた。多くの有望なアイデアは、実験室と量産の間にある大きな谷で消えていくと考えられている。
Discovered Materialsは逆に、AIエージェントの集団に、条件を満たす新素材の候補を計算科学の力で探させる。理論計算による絞り込みと実際の合成実験を組み合わせることで、これまで数年かかっていた材料探索の初期段階を、数日から数か月に縮めようとしている。
Discovered Materialsは、アメリカ・サンフランシスコを拠点に、半導体チップ向けの新しい素材をAIエージェントに探させる企業である。AIチップは動作するたびに大量の熱を発生させ、その熱をいかに逃がすかが、データセンターの消費電力や性能向上の大きな壁になっている。同社は、この熱をより効率よく伝えつつ電気的な性質も満たす新しい絶縁材料を、AIの力で見つけ出そうとしている。 従来、新しい半導体材料を発見してから実際に工場で使えるようになるまでには、10年以上の実験と莫大な費用がかかってきた。Discovered Materialsは、AIエージェントに理論計算を使って条件を満たす新素材の候補を大量に探させたうえで、実際に研究室で合成し、性能を確かめるところまでを一貫して行っている。同社はこの3か月の間に、世界的な化学メーカーが20年以上かけて開発し企業秘密として守ってきた製品と同等の性能を持つ、新しい熱伝導材料をつくることに成功したと発表している。 同社はまた、AIモデルがどれだけ新素材を発見できるかを測る評価基準「マテリアル・ディスカバリー・ベンチ」を開発し、一般に公開している。IBMやIMEC、スタンフォード大学、ケンブリッジ大学の研究者と協力してつくったこの評価基準では、複数の最先端AIモデルに新素材の探索を任せた結果、理論上は有望な素材候補を500件以上見つけられる一方で、実際に研究室でつくれる具体的な合成手順まで示せたのはわずか1件にとどまるなど、AIによる材料発見が抱える課題も明らかにしている。
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