無人海洋観測艇の開発
海を知るには、大きな観測船に大勢の乗組員を乗せて出るしかない。1日3万5000ドル、年間1200万ドル。危険な海域には人を送れず、嵐の中心には近づけない。だから海の大部分は、いまも観測されないまま残されている——それが当たり前だった。
人を乗せない。燃料も積まない。風と太陽だけで、12か月間ひとりで航行し続ける船を作った。人を乗せないからこそ、ハリケーンの目にも、南極の氷海にも入っていける。「人が行けない場所」を諦めるのではなく、「人が行かなくていい船」を作った。
Saildrone(セイルドローン)は、風と太陽光だけで動く無人の帆走艇(USV:無人水上艇)を開発・運用する企業です。アメリカ・カリフォルニア州アラメダに本社を置いています。 セイルドローンの動力は、翼です。船の帆ではなく、航空機の翼に近い設計の「ウィング」が、風を受けて推進力を生みます。この翼は、風速の最大5倍のスピードを生み出すことができます。船上のセンサーやコンピューターは、太陽光発電でまかなわれます。燃料は一切使いません。 最大の特徴は、耐久性です。1回のミッションで最長12か月、途中で港に戻ることなく航行を続けられます。北極から南極まで、これまでに75万海里以上を航行し、海上で1万7000日以上を過ごしてきました。 2013年、SD 1「ハニーバジャー」がサンフランシスコからハワイまで2248海里を34日で航行し、風力のみで大洋を横断した最初の無人艇となりました。2019年には、SD 1020がニュージーランドから南極大陸を一周。196日間で2万2000キロを航行し、氷点下の気温、15メートルの波、時速130キロの風、氷山との衝突を生き延びて帰還しました。2021年には、カテゴリー4のハリケーンの目の中に突入し、HD映像とデータを持ち帰りました。 コストの差は劇的です。従来の有人観測船は1日3万5000ドル、年間約1200万ドルの運用費と30人の乗組員を必要とします。セイルドローンの年間運用費は3500ドル。乗組員はゼロです。 現在は、気象・海洋観測に加え、海底地図の作成、違法漁業の監視、麻薬密輸や人身売買の追跡、そして海洋安全保障の分野にも展開しています。
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