理学・工学

量子技術研究を支える希釈冷凍機を、大学の研究室発の技術から北米唯一の量産メーカーへと育てる

Zero Point Cryogenics

量子コンピューティングなどの研究に不可欠な、極低温を作り出す希釈冷凍機(dilution refrigerator)の設計・製造

量子技術の研究に欠かせない希釈冷凍機は操作が難しく信頼性にも課題が残る精密機器であり、その多くを海外の少数メーカーに頼らざるを得ない、というのが北米における研究現場の共通認識だった。

海外製の希釈冷凍機を輸入するのではなく、大学の研究室で培った低温物理学の知見を土台に、使いやすさと信頼性を高めた冷凍機を自ら設計・製造することで、北米唯一の量産メーカーという立場を築いた。

Zero Point Cryogenics(ZPC)は、カナダ・アルバータ州エドモントンに本社を置く企業で、量子コンピューティングなどの量子技術研究に不可欠な超低温環境を作り出す「希釈冷凍機(dilution refrigerator)」および関連するクライオスタットの設計・製造を手がけている。対象となるのは、量子技術や物性物理学の研究を行う大学・研究機関、政府系研究機関、そして量子コンピュータの開発企業である。 同社の希釈冷凍機は、金属シールとレーザー溶接による気密性の高い構造や、遠隔からの状態監視・通知機能、外部の液体窒素デュワーの補充頻度を減らす拡張寿命コールドトラップなど、操作の簡便さと信頼性を高める工夫を随所に取り入れている点が特徴である。研究者ごとに異なる配線や光学系の要件に合わせたカスタマイズにも対応し、北米で唯一の希釈冷凍機メーカーとして事業を展開している。 2017年の設立以来、アルバータ大学の研究室発の技術を基盤にプロトタイプを開発し、2023年にはカナダ国立研究機構への初の商用機納入、2024年にはウォータールー大学への納入とチームの20人超への拡大を達成した。同年には低温技術の起業支援プログラム「Creative Destruction Lab」の量子部門も修了しており、量子技術の実用化を支える裏方として存在感を高めている。

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